暑さと本に浸る

昨日読んだ堀江敏幸の文庫をもう一冊買う。
『いつか王子駅で』
古典的アニメーションの劇中歌の題名にひっかけたようなふざけたタイトルには以前ハードカバーの時に見覚えがあった。
作品の内容を連想できないようなタイトルと装丁でもあった。
昨日読んだ時に感じていた文体の個性はいっそう際立っている。
何しろひとつひとつのセンテンスが長いのだ。
関係詞と接続詞を多用したような長文。
最初読んだ時に感じていた、関係詞節の翻訳のような修飾表現は、筆者が仏語の翻訳もこなすタレントの持ち主だと思いあたって腑に落ちたような気がする。
比喩や修飾のないセンテンスを許さないような、スピード感にも溢れるしなやかな文章だ。
芥川賞をはじめとする数々の文学賞を獲得していた時には手に取ることはなかったのだが、本との出会いのタイミングはこんなものかもしれない。
いつ書かれたものであろうと、本は変わらずそこに待っていてくれるからいいのだ。


さて、文体でもう一つ。
サンデー毎日椎名誠の新連載コラムが始まった。
『ナマコの…』なんだったけか?
ナマコの話があまりにキョーレツで覚えていない。
久しぶりに「シイ(ナマコ)ト」(なんと名前の中にナマコがいるらしい)の文章を読んだが、
変わらぬ軽妙な文章に思わず頬がゆるんだ。
予備校の講師室には新聞や週刊誌が常備されているが、
サンデー毎日は、受験データ類の提携の関係か、どこの校舎にもある。
中野翠の長連載コラム『満月雑記帳』は毎週楽しみなページ。
この人のキッパリと言い切る物言いと、映画等に対するセンスは信用に値するし、傾向が似ていると思う。
これで二つの連載だけは毎週ページをめくることになりそうだ。