これでもか、の残暑

残暑なんて言えないような真夏の暑さ。
さすがに日が落ちれば、風も涼しさを感じるが。


今月は、後期開講であまり余裕がなかったこともあり、
電車の中でも雑誌(クーリエ・ジャポンやreader's digest)をめくっていることが多かった。
読んだ本は2冊。
ゾーイ・ヘラー『あるスキャンダルの覚え書きあるスキャンダルの覚え書き [DVD]

映画化されたことで知った作品だが、ブッカー賞候補作になったというのを帯で知って購入。
映画は予告編を見ただけだったが、頭の中ではジュディ・ディンチが饒舌に語り、
ケイト・ブランシェットが少年への愛にうろたえ破綻する危うい女性になっていた。
立場や地位や年齢の差が人間同士の関係に影響を及ぼすのは必然。
しかし、その中で生きていくことは逃れようのないことで、誰もが自分を世界の中心に据えて生きている状況で、
他者との交わりは必ず衝突を生む。
許容範囲の閾値はそれぞれの個次第だが、それを測る水準はあまりに曖昧だと思う。
それが知らず知らずのうちに(時に意識的に)他者を傷つけ、自分を追い込む。


もう一冊は、堀江敏幸『熊の敷石』芥川賞受賞作とは認識していなかった。

熊の敷石 (講談社文庫)

熊の敷石 (講談社文庫)

作中にいろいろな引用があり、それがまた様々な印象を喚起する。
宮沢賢治の『貝の火』のような思い、熊の敷石の寓話的なエピソード。
澱みない水のように流れる文章の独特の味わいの中で、
「水に投げこまれたように」と例えられたモン・サン・ミシェルの楼閣のように浮かび上がる映像。
とりわけ、視覚のない子が傍らに抱く目を持たぬクマの縫いぐるみ。
そして今回も余韻たっぷり。


おや、ソファーの背に...